1998年の水田

よく「なぜ機械を使わないのか?そうすればもっと早く楽にできるのに」と言われます。
機械を買う費用、修理費、燃料代、機械を置く場所の確保、それに何より機械は、
土を傷め、環境にも悪く、私はそういうものとは相性が良くありません。
作物の持っている生命力を最大限に生かし、出来るだけ機械に頼らず、自然に近い形で環境に優しい農業をしていきたいと思います。
周りの人から「前の人が作っていたときは、よく倒伏していたけど、あんたのところの稲は全然倒れていないなあ」とか「よく穂がついている」と言われます。
稲は、穂に穂がついたり、1つの穂に250粒ついているものもあります。
台風が来ても周りの稲が倒伏する中、自然農法の稲は倒れません。
![]() |
![]() |
![]() |
1999年の水田


そのために、初期の草取りが遅れ、草まみれになってしまった水田もありました。 秋には、台風7号で大変な被害に遭いました。特に奈良県は“台風の道”といわれたほどでした。 あちらこちらの家の屋根瓦が破損し、水田の前の古墳の木もたくさん折れてしまいました。 当然、周りの稲もほとんど倒れました。私の稲も白米は、傾きましたが数日後には起き上がってきました。しかし、赤米はもともと茎が弱く台風の来る前から傾いていたので、台風後は倒れ、水に浸かってしまい、穂発芽を起こしてしまい、大きな被害がありました。 農家の人たちも「こんなにきつい台風は初めてだ」と言っていました。 私もはじめは「こんなきつい台風なのだから仕方がないか…」諦めていましたが「台風が着ても倒れない丈夫な強い稲を作らなくては…」と思うようになりました。

![]() |
![]() |
香り米 | 緑米 |
2000年の水田

冬の間は、新たに増えた2枚の水田の整備に追われました。休耕田だったので、ヒエまみれで畦はほとんど崩れてなくなっていて、開墾のような状態でした。 1枚は、代かきをして休耕にし、夏の間は均平作業でした。今年は、例年になくカラスが多く、苗代を荒らされたり、 草まみれになってしまったりで苗づくりに失敗し、慌てて籾を蒔き直しました。古代米も遅くに籾を蒔き直しましたが、一番元気な苗ができました。田植えは、6月20日〜7月2日に行ないました。今年もすべて1本植えの手植えです。最後は田植えが夜中までかかったこともあり、街灯のかすかな灯りを頼りになんとかできました。 周囲より半月ほど遅い田植えだったで、農家の人たちは心配してくれていたようです。 |
![]() |
![]() |
5ヵ所の水田で、中には草の多い水田やカラスやシラサギなどの鳥が水浴びに入り、 苗を倒したりして、困ったこともありましたが、それでも稲は元気でたくましく育ってくれました。 草取りの作業は大変ですが、ゆっくりと分けつし、元気に生育していく稲を見ていると 励まされているようで、何ともいえない心地よい気持ちになります。 前半は草が生えるのが遅く、あまりありませんでしたが、 8月に入るとみるみる草が増えだし、草まみれになってしまった所もありました。 それでも、それなりに分けつも増え、元気に生育していたので、 今までのようにイライラしたり、落ち込んだりはしなくなりました。 |
![]() |
![]() |
自然の中では草は生えてくるものであり、まったく草が生えていない方が不自然だと思うので、
稲が負けない程度の除草と草に負けない、病虫害にも負けない、そして台風が来ても倒れない、
きびしい条件の中でも元気にたくましく育つ、そんな生命力の強い稲に育ってくれることを 願いつつ取り組んでいます。
1粒の籾の力を最大限に発揮できるよう手助けができればと思っています。
このお米を食べた人が元気になり、喜んて頂けることが、何よりの励みになります。
「大丈夫かなぁ、ああすればよかった、こうすればよかった」と心配や反省の連続ですが、稲の姿を見る度にと慰められているような気がします。
ヒョロヒョロで弱々しい苗を1本植えにした所も消えてしまうことなく、たくましく育っている姿を見ると「よくぞここまで育ってくれました」と感謝したくなります。
たんぼによっては、虫に葉がボロボロに食われてしまった所もあり、どうなるかと心配でしたが、出穂する頃には回復し、立派に穂をつけてくれました。いつものことながら、人間が考えている以上に稲はたくましいようです。
今年も無事に稲刈りを終え、一安心です。これから次の準備が始まります。ない知恵をしぼって、いろいろと創意工夫をしながら、農業を楽しみたいものです。